ローカライゼーションのケーススタディ:Shadow Fight 3

Natalia Potekhina
プロジェクト統括責任者
すべては2017年秋、パブリッシャーであるNekki社からの依頼によって始まりました。『Shadow Fight 3』を英語から10種類の言語(フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、ブラジルポルトガル語、簡体字中国語、繁体字中国語、日本語、韓国語、トルコ語)へローカライズするというプロジェクトでした。本作の総テキスト量は約5万語に及び、ストーリーは7つの章に分かれています。章ごとに1週間ほどの時間をかけて翻訳を進めました。その後、ヒンディー語を追加し、2019年にはさらに3言語(タイ語、ベトナム語、インドネシア語)を加えました。
同じジャンルの他の作品と比較した『Shadow Fight 3』の最大の特徴は、その操作性にあります。よくある「タップを連打するだけで勝てる」タイプのゲームではなく、プレイヤーの技術の高さと努力の量が勝敗を左右する本格的な格闘アクションが魅力なのです。
ストーリーは、異なる長所と弱点を持つ3つの勢力の対立を中心に展開します。それぞれ独自の戦闘スタイルと武器を持っており、主人公であるプレイヤーはその中の1つの勢力に加わります。そして、世界の勢力図を塗り替える力を持つ「影力」を巡り、戦いを繰り広げることになります。本作はiOSおよびAndroidでプレイ可能です。
ローカライズ作業の開始前に、Nekki社よりキャラクターリストを頂戴しました。それは登場するすべてのキャラクターの背景や性格、その他の重要な情報が詳細に記載されるものです。まずはキャラクター名の翻訳を行い、用語集を作成。加えて、クライアントやエディターと協力しながら、キャラクターごとに会話のスタイル(口調)を決定しました。
Nekki社側には、ドイツ語とフランス語の翻訳をネイティブスピーカーがチェックできる環境が揃っていました。そのため、弊社は異なる3つの翻訳スタイルでテスト版の翻訳を作成し、クライアントに提示。最終的にクライアントが一番気に入ったスタイルを選択しました。その際、「このスタイルを他の言語にも適用してほしい」というリクエストを受け取りました。そこで弊社は、ゲームの「スタイルガイド」を作成しました。これはゲームのトーンオブボイスと同種のもので、プレイヤーへの語りかけ方や翻訳の自由度を定めた叩き台となる資料です。

翻訳者は、まずキャラクターの説明や相関関係、そしてスタイルガイドを熟読。その後、キャラクター同士の会話やプレイヤーとのやりとりを考慮しながら、翻訳を適切に進めてまいりました。
本作では、ストーリーとキャラクター同士のやりとりがゲームの重要な要素となっているため、会話の翻訳には特に注意を払いました。
各言語のテキストを比較した際、中国語版はよりコンパクトな文章になる傾向があります。

プロジェクトで特に複雑さを極めたのが、東洋の伝統的な武器の名称の翻訳です。刀剣類だけでも数多くの種類があり、それぞれに特有の名称があるためです。

また、防具に関する翻訳作業も多くの工数を要しました。
今回は、Nekki社の開発チーム様より詳細な情報をご提供いただいたおかげで、プロジェクトをスムーズに進めることが可能となりました。ですがそれに加えて翻訳の品質や精度を可能な限り高めるため、弊社の編集チームが多くの武器に関する追加の調査を行いました。

また、弊社は翻訳作業だけでなく、アップデート時のローカライズテストも実施いたしました。こちらのスクリーンショットは、インドネシア語版のバグレポートです。

こちらは、弊社が使用する翻訳ツール「memoQ」における『Shadow Fight 3』のローカライズ作業画面の一例です。
プロジェクトの主要データ
- 5万語
- 14言語
- 7つの章
- 1つの章につき約1週間
- 2017年プロジェクト開始(以降、定期的にアップデート翻訳や新言語の追加を実施)
クライアントからのフィードバック

弊社は長年にわたり、『Shadow Fight 2』および『Shadow Fight 3』の主要プロジェクトでINLINGOと協力を継続してきました。そしてお互いのやり方をすぐに理解して妥協点を見出し、スムーズにプロジェクトを進めることができたのです。さまざまな要望やリクエストにも、INLINGOは常に最高の品質とスピードで応えていただきました。プロジェクトマネジメントチームには特別の感謝と賛辞を贈りたいと思います。彼らの仕事振りは、まるで寝食を忘れて働いているのではないかと考えてしまうほどで、まさに「鉄人」の集団と言っていいでしょう。弊社が新しいプロジェクトを開始する際には、迷うことなくINLINGOにローカライズを依頼しています。
Nikita Korzhavin
Nekki社 ビジネス開発ディレクター
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